Starlings Of The Slipstream

今日もどうもありがとう ほんとにいい日だった

8月23日

「風立ちぬ」観た(ネタバレあり)

70歳を越えてこんな若くて身勝手な陰茎剥き出しの映画を撮れるものなのか、いや寧ろどうして70歳になるまで駿はこんな映画を撮れなかったのか。


二郎は作中で幾つか挟まれる戦争の記号に全くと言っていいほど無関心だし、ピラミッドの有無の返答で「美しい飛行機が作りたい」と呆気にとられるような本心をブチ撒けるし(「生きねば」よりこっちの方がキャッチコピーに相応しい気がする)終いには自分の愛した女を黄泉から引き摺り出してあなたは間違ってなかったと最後に自己肯定するし……第一、ここまで強烈に作家性を全面に出しておいて恋愛映画(エンターテインメント)としても成立しているのはズルいとしか言い様がない。帽子とパラソルと紙飛行機の演出とかテーブルとか風とかベタだけど嫌味がなくただ上手い(僕らがよく知ってる宮崎駿だ)。この映画を分からないという人は恐らく登場人物に感情移入出来ないとか、ジブリ映画として見てしまうあまり作中の空想と現実の切り分けが出来ていないのだろうが、二郎への感情移入は庵野ですら全部は無理だろう。駿に比べたら庵野はまだ人間味があると本作で思い知った。しかし最後のアレはなー、駿も結局美女(少女)に自分の生を肯定される事を望むのかってのはちょっと引くわなーというか。


しかし庵野の生返事はホント他人に興味がなさそうで良かった。誰もやりたがらない汚れ役をよく演じてくれたと思う(というかあそこまで自己投影して物語を描くなら駿自身がやれと言いたい)。なのでエヴァ劇場版のラストはここまで正直にとは言わないけど逃げずに描いて欲しい。いや、無粋なことだとは思うけど。