Starlings Of The Slipstream

今日もどうもありがとう ほんとにいい日だった

2013年 春アニメ感想 vol.1

とりあえず5作品の感想。他に完走(継続中含む)したのはMJP、ガルガンティア、俺妹、ヤマト2199。これらは気が向いたら……。

フォトカノ

6話まではアニメ表現としての遊びとストーリーの破綻を、ポルノ・アニメのセクシャリティが覆い尽くし、いわゆるオタクによるリビドーの体現に過ぎなかったわけだが、ターニングポイントとなったのは、湯浅政明が担当した実原氷里回。水橋かおりという、内面に抱えるコンプレックスをキャラクターのパーソナリティに明確に反映させる事に長けた稀代のプレイヤーに先導されるかのごとく、以降急速に作品性を高めた(スライムがホイミスライムになる位のレベルで)。
あらかじめ決められた結末に対して1話完結の形式でいかにして納めるか、というミッションにおいて、作品の主題であるフォト―――日常を切り取るという行為を上手くシナリオに反映させ、様々な場面のコンテを切る事で限られた中で時間軸に贖い、不時着してみせた10話と12話は(多くに目をつぶる必要はあるが)傑作。特に、もはやいつ振りかすら思い出せない、普段は自信に満ち溢れた"オンナ"の声を得意とする沢城みゆきの演じたか弱き少女、深角友恵は精巣にダイレクトに響いた。

波打際のむろみさん

かつて新房昭之がその大胆なBL影とともに好き勝手にやり尽くし、結果として追い出されたタツノコの豊富な土壌の上で、金田フォロワーの新星である吉原達也は、アニメーションの文法に極めて忠実に、またエロティシズムにも特化しつつ、「波打ち際」というコンセプトを決して軽視する事なく、12分の中にそれ以上のものを詰め込んで(この表現が一番適切であるように思う)みせた。
登場人物の人魚という設定や、水島大宙の冴え渡るツッコミを聞いていると、岸誠二のあの作品を思い出さずにはいられないが、響き渡る唯一無二の彼女の声が、それとの比較が極めて不毛である事を教えてくれる。あぁ、田村ゆかりはもはや、アニメ業界が抱える一つの宝だ。

あいうら

女性キャラの骨盤をリアルに描けないために、結果的に尻や太腿がエロくないという多くのアニメーションに対抗するかのごとく、本作は京都アニメーションのキャラクターデザインにおける最良の部分を拝借し、5分間という極めて限られた時間の中で、時に物語を放棄してもなお、アニメキャラの細部に宿るフェティシズムを追求し、「脚」を懇切丁寧に描き続けた。ただ一つ残念なのは、本編を支配するアンビエントな雰囲気と相反するかのようなオープニングの性急さが時に毒として映ってしまうことか。

ジュエルペット ハッピネス

大地丙太郎は「神様はじめました」で、佐藤竜雄は「モーレツ宇宙海賊」で、90年代のみならず00年代を通過してもなお、それぞれの歩んできたレールの上から外れる事のない作品を作り上げたわけだが、チャチャ三羽烏のもう一人である桜井弘明は、それらの衝撃を越え、今でも第一線でいる事を我々に誇示する。
今作はジュエルペットと人間の心の触れ合いを重視し、方向性としてはてぃんくるのそれをより突き詰める事を選んだわけであるが、結果としてジュエルペット達はかつてのサンシャインのようにキャラクターの範疇を大きくはみ出さない程度の、丁度良い自由度を与えられ、ひいてはそれが物語の拡張性を持たせることに成功している。何より、今作はジュエルペット達の会話劇だけで楽しませてくれる。
る~んによるボロ負けで終わったはずのギャラクシーエンジェル―――ブロッコリーによるアニメキャラを用いたザ・ドリフターズの再現は、またしてもミルキィホームズで完膚なきまでに敗北したわけだが、その遺伝子は、かつてデ・ジ・キャラットを手掛けた桜井の「ジュエルペット ハッピネス」に受け継がれ、不死鳥のごとく復活を遂げたのだ。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

視聴前に原作を一気に読んでしまったあまり、この作品に対しては多くを仮託しすぎ、また自分が思い描いていた画との乖離に悩まされてしまった。
作者はアニメ版は客観に重きを置いていたと注釈を付していたが、作品は全体的に乾いた画で構成されており、それは比企谷八幡という(結果的に)優しすぎる人物の一面を描く(他者の視点で理解する)という点においては幾分的確であったかもしれないが、より主観的に八幡の優しさと、葉山の残酷さと、雪ノ下の脆さを描き出していれば、青春群像劇としての正当な、(この作品の名前を出すのには抵抗があるが)とらドラ!のような評価を与えられる事もあったのではないかという残念な思いがある。
全くの蛇足でしかない3巻までの話はここでは置いておくとしても、特に、感情の機微の描写の多くは、声優の演技に多くを求めすぎていたようにも思え、間接的に神谷浩史のモノローグの上手さを認識する羽目になってしまった。しかしその中でも、息をするように芝居をこなした東山奈央はやはり天才としか言い様がない。