Starlings Of The Slipstream

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たまこまーけっと

それが良い意味でも悪い意味でも、オタク的想像力の文脈以外からは出てこないであろう作品の代表格がビビッドレッド・オペレーションであるならば、たまこまーけっとは映画・ドラマを中心に80年代までに完成され死滅した、日本特有の下町人情物のドラマツルギーをアニメーションというフォーマットで再解釈し、この2013年に復権させる事に成功した作品である。山田尚子女史が監督を務めた前作、けいおん!とは異なり、家族の風景を今節丁寧に描いている一方で、母親を不在にし、主人公である北白川たまこに母性を仮託してしまっている点には少々オタク文化の悪臭を感じるが、デラ・モチマッヅィという異国から来た喋る鳥を要素の一つとして取り込む事で、商店街の外に生きる第三者の視点を介在させている点にこそ、この作品の醍醐味はある。恋愛要素を決して排斥することはなく、そこに暮らす人々の心情を描く際は説明的にならず間を描くことに終始しつつ、四季の移り変わりはモチーフと季節行事を通して極めてベタに表現される。そう、たまこまーけっとと広義の日常系アニメの目指すものには極めて明確な違いがある。
「ユートピア幻想としての商店街は既に現代には存在しない」などといった安直な批判は、喋る鳥を登場させている以上意味を成さないわけで、それでもなお、この作品でノスタルジアを描いた瞬間は一時もなく、登場人物は限られた世界、「商店街」の中で、今を少しでも謳歌しようと生きている。もはや「この物語はフィクションです」と敢えて丁寧に但し書きを付ける必要はなく、後は視聴者が好きなように自分で線を引き、取捨選択すれば良いだけの事なのだ。