Starlings Of The Slipstream

今日もどうもありがとう ほんとにいい日だった

預言者

久しぶりに映画見てきた。カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したジャック・オーディアール監督の『預言者』。主人公マリクがパトとズラタンとトーレスを足して3で割ったような顔で、その他ヴィラロボスとかマッドリブに似た人も出てくる、などと全く話の関係ない事が最初に出てくる辺り、あ、これ外れ映画掴まされたのか?と問われたら決してそういう訳でもなくて、派手ではないけれどカメラワークの素晴らしさは圧巻だったし、マリクを極めて自分勝手なやり方で導いていくマフィアのボスを演じたセザール役のニエル・アレストリュプの演技が白眉。彼一人だけ演技がずば抜けてると思っていたら、その他は殆ど演技初心者とのこと。そう考えると体感した以上に迫力があったフィルムに思えてくるからプラシーボって不思議。


しかし人の殺し方も知らない新入りが一端の構成員に成長し、結果飼い犬に手を噛まれちゃいましたてへぺろ、みたいなサクセスストーリーと云うのは目新しい題材ではないわけで、どちらかと言うとミニシアター系というより王道ハリウッド的。監督はそれに対して、主人公が初めて殺めた相手を拝借して、その幻想を登場させることにより主人公の葛藤と成長を描き出す、という手法を用い(罪悪感を一切働かせるスイッチになっていない辺りは斬新だと思う)、大味な物語になってしまう事を回避しようとしたと思うのだけれど、そこがストーリーの主軸になるわけでもなく何とも中途半端な出来。それとこの主人公、何を考えてるか終始分からず、只ならぬ狂気を感じさせる演技はいいのだけれど、途中から殆ど自己嫌悪に陥ることがなく成長しすぎてている節が見受けられる。伏線の張り方や構成には目を見張る物があるものの、預言者というプロットが途中で生きるのか最後まではっきりせず。加えて映像が無闇に綺麗すぎており、まるで刑務所ではなく、どこか違う所にいるかのよう。結果出てきた評は、いかのもフランス人の作った綺麗なマフィア映画ものという感じ。


最後に主人公がセザールに対して自分が積み上げた「権威」を示すために下っ端に焼入れさせるシーンがあるけれど、正直そこまで視覚的に表現するのはクドいと思ったし、あそこは何も語らず目線(眼力)に焦点を充ててフェードアウトする方がスッキリした終わり方だったのでは?と雑感。出所してシャバに戻る所も流石に説明的過ぎて、友人の妻と子供が待っており手下が車でお出迎えとかおいおい日本のヤクザ映画か、と笑いを堪えるのに必死。アメリカ人がこの映画作っていたら、主人公が殴るシーンで終えてたんだろうな、とか野暮なことを考えてしまう始末。


あと挿入歌の入るタイミング等が最高にダサい。駄目だこれ以上書いても不満しか出てこない。